海外在住の方は、CrowdWorksやLancersなどのアウトソーシングサービスに登録されている方が多いのではないでしょうか?
近年、海外在住というだけでよくメッセージが送られてくるのが”買付パートナーの募集”といった案件。
私もアウトソーシングサービスにはいくつか登録していますが、割と頻繁に提案メッセージを受け取ります。
求人内容には”簡単なお仕事♪”であったり”学生さん、主婦の方におすすめ☆”といった記載もよくあり、魅力的だなぁと感じる方も多いかと思います。
このようなお仕事は二つ返事で引き受けても問題ないのでしょうか?
原則NG!逮捕案件も出ています!
答えはノーです。
提案をそのまま引き受けてしまうのは基本的に辞めておいた方が良いです。というのも、在住国での不法就労にあたる可能性が高いからです。
後ほど詳しく紹介しますが、日本人が海外で働くには最低限”就労ビザ”が必要です。
国によっては就労ビザにプラスして開業届出をして事業者番号を取得したり、各種税金の手続きも必要となることも多いです。
つまり就労ビザのない学生さんや家族帯同などの主婦の方は、原則在住国で働くことはできません。
ただし、在住国によっては一定の条件を満たすことで就労可能なケースもありますので、就労の可否は在住国で問い合わせてみましょう。
また、家族帯同の方は会社の方から就労制限がされている場合もありますので注意してください。
なお、在住国で必要な手続きを行わずに就労する不法就労は犯罪行為にあたります。不法就労は一発で強制国外退去となる事案です。絶対にやめましょう。
海外では、実際に逮捕されたケースも出ています
少し前の話ですが、”ジモモパリ”というサイトで”注意喚起 買付の仕事 逮捕 犯罪”という書き込みがあったことが話題になりました。
以下に書き込みを引用しますが、安易に買付などのお仕事を引き受けるのはやめましょう。
フランスでバイマなどの商品の買付バイトをされてる人が多いと思うのですが注意喚起です。
ほとんどの人が事業者登録をせずに買付のパートナー契約をされていますが、実際にはそれはフランスでは完全に違法になります。
先日友人がそれをフランス側にバレてしまって逮捕されました。これまでは中国人が逮捕者が多かったらしいですが、最近は日本人も転売などをする人が多いがために、日本人にも警戒をしているらしいです。フランスの法律では、日本でバイマで店舗を運営している依頼主まで罪が問われるので、友人の場合も日本のパートナーにまで罪を問うことになると警察に言われたらしいです。
友人は郵便局で発送手配をしているところを現行犯されたとのことです。一度日本に送るともうその利用が買付の転売なのかギフトとして送ったのは分からないのでどうしようもできないので、郵便局または空港などで入出国するとき逮捕などを狙ってるのではないかと思います。
ですので、とりあえず事業者登録せずに買付をしてる人はいますぐこの仕事をやめたほうがいいかもしれません。フランスの警察が現行犯のみを狙ってるなら今すぐやめて今後の取引をしなければ多分お咎めなしで逃げ切れるはずです。なのでやめましょう。
あとは、アンダーバリューを指示してくる日本のショッパーがいますが、関税を逃れることで日本の法律で罰を受けるのは輸入者ですが、虚偽申告で発送してフランスの法律で罰を受けるのは輸出者になります。ですので絶対にやめましょう。
とりあえず危ない橋は渡らないほうがいいです。
ジモモパリ
また、日本のフランス語翻訳業者である”マリアンヌ翻訳”というところでも、詳しく説明がされています。
以下に一部を引用しますが、詳細はリンク先からご確認ください。
「営利活動」ですが、フランスでは、「登記を済ませた法人」もしくは「登記(登録)を済ませた個人」にしか認められていません。それ以外は違法、「もぐり営業」です。そして、フランスでの「もぐり営業」は日本人が想像できないほど悪い「犯罪」なのです。
マリアンヌ翻訳 -フランス在住の日本人がおこなう営利活動に関して-
海外で働くには
そもそも、海外で働くには何が必要なのでしょうか?
就労ビザ
自営業雇われ問わず、まず海外で働くのに必要なのものは先述した”就労ビザ”です。海外に中長期で滞在するにはビザが必要ですが、いくつか種類があります。
その中でも就労ビザはその名の通り”就労を目的とした滞在者のためのビザ”です。就労ビザにもいくつか種類があり、たいていは就労内容によって分けられます。原則として、所持している就労ビザで許可されているもの以外の仕事はできないのが特徴です。
ただし、この就労ビザが無くても問題なく働けるケースもあり、代表的なのが”配偶者ビザ所持者”と”永住権所持者”です。永住者は基本的には就労制限はありませんが、配偶者ビザの場合は国によっては制限がある可能性があるので、就労を希望する際は問題がないか事前に確認しておきましょう。
事業者登録
現地で法人登録済みの企業などに雇用される場合は基本的に必要ありませんが、買付パートナーのような自営業/個人事業主として営利活動をする場合は在住国で”事業者登録”をする必要があるケースがほとんどです。
海外在住の方は”翻訳”、”観光ガイド”、”買付代行”、”物品販売”、”料理教室”などを運営する方が多いかなと思います。
海外では控除がないケースも多いので、1円でも収入がある場合は事業者登録が必要になることがほとんどです。
事業者登録をすることで在住国での各種税金や年金等の支払い義務も発生してきますので、納付を続けていける収入がきちんと確保できるのか、開業する前にしっかり考えましょう。
海外から日本で開業届を提出することも一応可能ですが、在住国の法律上仮に日本で開業したとしても、在住国現地での事業者登録がないと営利活動をしてはいけないというケースも多いです。
日本で開業届を出したい場合は予め在住国の専門家に確認しておきましょうね。
事業拠点
先述の事業者登録には原則として拠点となる施設が必要です。在住国や事業内容によって異なってきますが、自宅でもOKな場合と、どこかオフィスや倉庫を買う/借りる必要のある場合があります。
自宅でもOKなら問題ありませんが、オフィスや倉庫が必要な場合は拠点の維持にもお金がかかってきます。
開業前に維持費がいくら位になるのかしっかりと試算しておきましょう。
買付パートナー/買付代行業を行うには
買付パートナー/買付代行業にチャレンジしたいとお考えの方は、”ネットに書いてあった”といったようなやり方ではなく(こちらの記事も含みます!あくまでこの記事は参考としてください!)、まずはきちんと在住国の専門家に相談しましょう。
参考までに、基本的に必要となるのは以下の手続きとなります。
※以下はイタリアをベースにしているので、在住国によって異なることがあります。
自営業が可能な就労ビザの取得
既に就労制限のないビザや自営業可能なビザをお持ちの方は、こちらの手順は飛ばしてもらって大丈夫です。
現在所持しているビザに就労制限がある/就労ビザはあるが別業種の自営業を行いたい/そもそもまだビザがないといった場合は、まず原則として自営業が可能な就労ビザを取得する必要があります。
以前聞いた話なので今は変わっているかもしれませんが、買い物代行サービスの場合は”販売業”、買付パートナーの場合は”バイヤー業”のものが必要になるとか…。
付加価値税番号(Partita IVA)の取得
次に”付加価値税番号”の取得が必要です。先述の事業者登録と同じものを考えてもらえればOKです。
イタリア語では”Partita IVA”と言われており、直訳すると”付加価値税(VAT)番号”ですが、個人の税番号である”Codice fiscale”との差別化のために商業税番号と訳されることが多いです。
また、付加価値税番号は原則公開しなければなりません。イタリアの企業サイトや通販サイトなどを一度見ていただけるとわかるのですが、たいていはサイトのフッター(一番下)部分に”P.IVA IT◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯”と記載があります。※ITは付いていないこともあります。
反対にどこにも付加価値税番号の記載のない通販サイトなどは、いわゆる”怪しい業者”と判断されることが多いです。
私も買い物代行サービスの案内ページで付加価値税番号を公開しています。
よくイタリア在住の方で同じようなサービスを展開していたり、BUYMAなどで出品者として活動されていたりする方をよく見かけますが、付加価値税番号を公開されている方はほとんど見かけません。
公開されていない方は公開の原則をご存じないか、もしくはそもそも違法営業かのどちらかでしょうね…。
ちなみに付加価値税番号の取得時に事業拠点も併せて登録されます。
事業用銀行口座の開設
自営業には原則として専用の銀行口座が必要です。個人のものは使えないことが多いので注意してください。
銀行によってはキャンペーンなどで手数料が安くなっていることもあるので、各銀行のWebサイトなどを比較して決めましょう。
たいていは口座の開設とともにキャッシュカードと一体型のデビットカードがもらえます。クレジットカードと選べる銀行もあるので、自身の事業のキャッシュフローをよく考えて選んでください。
電子インボイス(Fattura elettronica)の準備
イタリアでは最近インボイスが電子化されました。そのため取引ごとの請求書の発行には専用のソフトやフォーマットが必要となっています。
一応無料のものもあるそうなのですが、イタリア人でも使いこなすのが難しいそうなので有料のものを契約している方が多いですね。私も”Fattura in cloud”というところと契約しています。
金額やフォーマットなどはサイトによって異なりますので、金額や操作性などを比べて自分に合ったものを選んでくださいね。
納税関係の準備
付加価値税番号を取得すると、納税義務も発生します。在住国での各種税金や年金などの支払いが必要となりますので、各種Webサイトなどで納付方法などを事前に確認しておきましょう。
また、日本の年金に任意加入されている場合は2重加入になる可能性がありますので、予め専門家に相談をしておくと良いです。
税理士と契約するのもアリ
いかがですか?色々とやらなければならないことが多いのがわかるかと思います。
自分で全てこなしても良いですが、自信がない方や時間のない方は税理士と契約するのも1つの方法です。
もちろん契約にお金は必要ですが、彼らは専門家ですので適時的確なアドバイス/判断をしてくれますよ。
開業時だけでなく、開業後も様々なところで力になってくれる頼れる方々です。
付加価値税番号(Partita IVA)ってどこで必要になるの?
付加価値税番号(Partita IVA)を取得したけど、どこで必要になるの?と思われる方も多いかと思いますので、以下に一部ご紹介しますね。
請求書(インボイス)の発行
買い物代行サービスや買付パートナーの場合、取引ごとに請求書(インボイス)を発行しなければなりませんが、この請求書に付加価値税番号も記載します。
請求書は在住国での確定申告にも必要になることがほとんどですので、記入ミスがないかしっかり確認してから発行しましょう。
商業貨物の発送
買い物代行サービスや買付パートナーの場合、買い付けた商品を顧客の方宛に発送しますよね?
その際の配送関連書類に付加価値税番号の記載が必要になります。
配送業者によって書類が少しずつ異なりますが、通常は以下のものに付加価値税番号の記載が必要です。
・コマーシャルインボイス
・各社で必要となる輸出関連の宣言/宣誓書
これらの書類に付加価値税番号の記載がないと、商業輸出ができないので注意してください。
買付時/商品発送時の注意点
商品の買い付けや買い付けた商品の発送時にはいくつか注意点があります。よく間違いやトラブルが見受けられるケースを以下に紹介しますね。
買い付け先は信頼できるお店なのか確認する
特にオンラインで買付する場合は注意してください。ブランド/メーカーのオフィシャルオンラインショップであれば確実ですが、他のショップで買付する場合はそのショップが信頼できるお店なのか必ず確認しましょう。
信頼できるかどうかは以下のポイントである程度判断ができます。※もちろん例外もあります
・会社情報/運営者情報がしっかり記載されている
・支払い方法が豊富
・サイト内の情報が適時更新されている
会社/運営者情報については付加価値税番号(Partita IVA)もしっかり確認しましょう。
Agenzia delle entrate(イタリアの税務機関)Webサイトのこちらのページからも、付加価値税番号が有効な番号かどうかが確認できます。
商品は”商業貨物”として発送する
有償取引(金銭のやり取りが発生する取引)の場合は、必ず商業貨物(イタリアEMSでいうところの”Merce destinata alla vendita”)として発送してください。
ギフトやサンプルとして発送することは脱税行為に当たります。絶対にやめましょう。
ギフトは発送人から宛先人への贈り物(無償)という場合のみに適用されます。宛先人が別の誰かへの贈り物として使うという場合は対象外です。
サンプルも名前通りサンプルとして商品を発送する場合のみにしか使えません。
インボイスの金額は販売額で記載する
たまにインボイスの商品金額を仕入れ値で記載している方がいらっしゃいますが、販売額が仕入れ値と異なる場合は販売額を記載しましょう。
通常お店で購入する際のレシートも、お店の仕入れ値では記載されませんよね?それと同じです。
仕入れ値(商品代金)と買付手数料、送料を分けて記載しても問題ないとは思いますが、契約金額の総額と等しくなっているか確認してくださいね。
紛失/破損時の補償金額にも関わってきますので注意してください。
なお、先述したジモモパリの投稿にもあったアンダーバリュー(商品金額を低く記載すること)は違法行為です。
虚偽申告で在住国にて罪に問われるのは発送した本人ですので、絶対にやらないようにしてください。
個人情報の取扱いについて確認しておく
特に買付パートナーの場合、雇用主宛ではなく雇用主の顧客宛に直接発送することがあるかと思います。
その際は顧客の方の個人情報(名前、住所、電話番号など)を買付パートナーである自分に提供する旨の同意を取っているのかどうか、きちんと確認しておいた方が良いです。稀にトラブルのもととなっているようです。
最後に
いかがでしたか?簡単にできそうな買付パートナーをやるにも色々な手続が必要ですね。
イタリア人は交友関係が広い人が多いので、専門家探しに困ったら友人のつてを辿ってみると案外簡単に見つかったりしますよ。