イタリアに在住されている子持ちの方やイタリア留学を考えている方にとっては、切っても切れない関係のイタリアの教育事情。日本とは全く異なるのでしょうか?それとも似ているのでしょうか?
今回はイタリアの教育制度について少し見ていきましょう。
イタリアの教育制度
イタリアの学校も日本と同様に保育園/幼稚園から大学まであり、イタリアで義務教育とされているのは小学校入学(6歳)から16歳までの10年間です。
また、日本とは異なり、イタリアの学校は9月始まりで学年の区切りは1月1日生まれ〜12月31日生まれです。1年の終わりは6月頃となっており、以降は長い夏休みがあるのが特徴。夏のバカンス以外にもクリスマス休暇やイースター休暇などの長めのお休みもちらほら見受けられます。
保育園/幼稚園 (Asilo nido / Scuola materna)
保育園(Asilo nido)は0歳から、幼稚園(Scuola materna)は3歳になる年の9月から通います。
小学校 (Scuola Primaria / Scuola elementare)
小学校は6歳になる年の9月から通い始め、5年制となっています。ただ、日本と違いイタリアは小学校から留年制度があるため、同じクラス内であっても生徒の年齢はマチマチです。ちなみに飛び級制度はありません。
小学校で学ぶのは、必修科目は国語(イタリア語)、算数、歴史、地理、理科、英語、技術美術、音楽、体育があります。1-2年目は国語と算数が中心で、以降その他の社会科や理科などの科目も学んでいくようで、この辺りは日本と少し似ていますね。
イタリア特有の教科は”宗教(カトリック)”です。とはいえ、近年はイタリア国内にも移民が増えて非キリスト教徒の子供も多くなっていますので、宗教の授業は任意となっているそうです。受けない場合は別で道徳の授業があるそうですよ。
また、小学校では担任は5年間変わらず、担任の先生と方針が合わない場合は転校をすることもあるんだとか。
近年イタリアでは教師不足が原因で、本来必修科目である音楽と体育の授業ができない学校も増えています。日本でも以前未履修が問題となったことがありましたが、イタリアの場合はそもそも教えられる教師がいないため、未履修のまま卒業せざるを得ないケースがほとんどのようです。
教師不足の影響がもう一つあり、本来小学校では日本のように15-16時頃まで授業を受けて帰宅するはずが、午前中のみの授業で残りは宿題として各家庭でこなす必要があるという学校が増えています。
共働き家庭の場合は”午前中で帰って来られても家に誰もいないんだけど…”という状態になるため、非営利団体の運営する学童保育や子どもの祖父母に預けることも多いようです。日本でいうところの”鍵っ子”はイタリアでは聞いたことがありませんね…。
中学校 (Scuola secondaria di primo grado / scuola media)
中学校は11歳から3年制となっています。中学校は正確には前期中等教育といい、修了するためには”Terza Media”という国家試験に合格しなければなりません。
試験内容はイタリア語、数学、外国語で、筆記試験、そして口頭試験の両方があります。合格率は9割以上ですが、不合格になるともう1年最終学年をやり直すことになります。
余談ですが、このTerza mediaは外国からの移民が、就労等のためにイタリア国内での最低限の学歴確保のために受けることも多いです。また、Terza mediaに合格していれば、永住権申請時のイタリア語テストもパスすることができます。
高等学校 (Scuola superiore / Liceo / Istituto tecnico / Istituto professionale)
高等学校は14歳から5年制です。正確には後期中等教育といいます。
いわゆる普通高校は”Liceo”と呼ばれており、一般教養がメインの”Liceo classico”、理系の”Liceo scentifico”などいくつか種類があります。
Liceoの修了にはこれまた国家試験の”Maturità”に合格する必要があります。イタリアの大学は入学試験がないため、この試験に受かれば希望するどこにでも進学できます。※医学部などの特定の学部を除きます。
また、日本でいうところの工業/商業高校は”Istituto tecnico”や”Istituto professionale”と呼ばれます。特にIstituto professionaleは卒業してすぐに働き始めることを前提にしているので高校というよりは専門学校に近い印象ですね。
ちなみに、ストレートに進級/進学していれば高校在籍中に義務教育終了の16歳を迎えることになりますが、高校卒業が義務教育の要件ではありません。そのため義務教育終了時点で中退する人も多いのが現状です。
大学 (Università)
イタリアの大学は学部によって在籍年数が異なります。一般的には3年制ですが、法学部や薬学部などは5年、医学部や歯学部などは6年となっており、卒業後の学位も異なります。
3年制修了の場合は”Laurea Triennale”、5年もしくは6年制終了の場合は”Laurea Magistrale”と呼ばれています。また、3年制終了の学部であっても、その後2年間の専門課程を修了すればLaurea Magistraleの学位となります。
在籍年数に幅があるのには理由があり、元々イタリアの大学は5年制が基本だったのですが、あまりにも修了できない学生が多かったため3年制の学部を導入したという背景があります。
日本の大学制度に例えると、Laurea Triennaleが4年制大学卒、Laurea Magistraleは修士課程修了に近い扱いですね。
ちなみに日本人がイタリアの大学に入る際は、2020年度まではイタリア文化会館を通して各大学へ出願をする必要がありましたが、2021年度以降は各個人で希望する大学へ申請する方法に変更されていますので注意してくださいね。
海外在住でも、日本の教科書がもらえる!?
お子様のいる海外在住邦人の方はご存じの方も多いかもしれませんが、実は海外に住んでいても日本の学校で使われている教科書の配布を受けることができます。ただし義務教育課程(小学校・中学校)のみとなりますので注意してくださいね。
原則として日本国籍があって海外に1年以上滞在する場合は配布対象となりますが、海外に永住するという場合は対象外です。しかし、将来的に日本の中学校/高校などへ進学や、日本で就労することを視野に入れている場合は配布を受けられます。
出国前の方は公益財団法人海外子女教育振興財団に事前に問い合わせましょう。既に海外に在住している場合でも、在住国の日本国大使館もしくは総領事館で申請ができますよ。
まとめ
いかがでしたか?日本の教育制度とは少し異なりますね。イタリアはモンテッソーリやレッジョ・エミリアの発祥国でもありますので、興味のある方はご自身でも調べてみてください。